米非営利団体「民主主義・技術センター(Center for Democracy and Technology)」のヌーラ・オコーナーとElevation Partnersのロジャー・マクナミーの両氏はCNBCのインタビューで、Android端末がAppleの製品より安いのは、ユーザーが個人情報を実質手放すことになっているからだと、厳しい口調で非難するとともに、Appleが他のテック企業と比較して、極端とも言えるレベルで消費者のプライバシー保護に心血を注いでいるかを指摘した。

  • CNBCの"Closing Bell."より

これらは、CNBCの"Closing Bell."での発言である。マクナミー氏はAppleが昨年取り組んだプライバシー保護の施策は消費者の利益を守るため、本当に素晴らしい仕事をし、安全性を確保したと激賞した。例えば、Googleの音声アシスタント「Google Assistant」やAmazonの「Alexa」は外部のサーバーへ情報を渡してしまっているが、Appleの「Siri」では、集めた情報は端末の外には出ないようになっている。安全性の面でも、改善が図られているとはいえ、Androidアプリに「安心」のお墨付きを与えるのは、正直躊躇われるが、iPhoneアプリは厳格な審査が存在する上、構造上、外部からのアクセスを遮断した環境下で稼働するようになっているから、ウイルスなど悪意のプログラム(マルウェア)による攻撃を受けることはない。

また、マクナミー氏はEUがGDPR(EU一般データ保護規則)を発布したように米国もそれに相当するような法整備を行うべきだと主張する。が、Appleは、政府に要請されたわけでなく、進んで保護対策に取り組んでいるのを高く評価する、そしてそれは「希望の光」であるとも。

マクナミー氏の発言は、過日、 Vice News Tonightで放映されたAppleのCEO、ティム・クック氏のインタビューを受けたものあると思われる。そこでクック氏は明言するのは避けたが、FacebookやGoogleのような広告ネットワークを基礎に据え、データ共有に頼るビジネスモデルを暗に批判した。

多くのテック企業は、自分たちのサービスをより良くするするために、あなたのデータを収集すると訴えるが、それらは本質的にペテンであるとクック氏は糾弾する。そういった呼びかけはすべて、戯言の寄せ集めに過ぎないのだ。

Appleは以前より、プライバシーは基本的人権であると主張するとともに、個人情報をどこまでビジネスに利用して良いものなのかという問題を提起してきた。ユーザーの個人情報を第三者に提供するというのは誠実さに欠けるだけでなく、ユーザー体験を損ねるという側面もあるのに、それに気付いてる企業は少なく、気付いていたとしても意図的に無視しているという状況がある。直近で悪事が剔抉されることになったFacebookにはモラルの欠片も感じられないと思ったのは筆者だけではないはずだ。

Googleについても前述の通り、両氏は批判の声を上げた。確かにAndroidスマートフォンはiPhoneと比べると安い。だが、安かろう悪かろう以前に、実質、個人情報を第三者に横流ししているのは倫理的に問題があると言わざるを得ない。GoogleもFacebookも、多くのウェブサイトにとって、広告は不可欠な収益源であるという認識に立つ。しかし、それは倒錯的な考え方であるのは明白である。

筆者はWebメディアが広告見せるから無料にするというモデルから脱却すべきだと力説してきた。この際だから言うが、検索流入に頼って消費者にゴミ同然の記事を読ませるのは犯罪的な行いである。タイトルや梗概で釣って、中味がない記事の数たるやという話なのだ。そうではなく、ユーザーからお金をとる購買モデルへの転換を図るのが順当なのではないだろうか。お金を払う価値がないコンテンツは自然と追放されることになり、必定、ゴミを食わされることもなくなる。日本では残念ながら、こういった件に関してはあまり意識されていないという状況があるが、それは明らかに不健全であり、かつ消費者に不利益を強要するものであることに一刻も早く気付いてほしい。