海外のIT系ニュースサイトは先週、新Surfaceの話題で持ちきりだった。もちろんAndromedaではなく、Appleが2018年3月にリリースした第6世代の9.7インチモデルiPadの対抗製品に当たる新Surfaceだ。このiPadは日本国内で37,800円(税別)という価格設定だが、2018年5月にブルームバーグが報じた内容によれば、新Surfaceも400ドル前後になるという。

新Surfaceに関する噂はいくつか出ていたが、その信憑性を高めたのが、WinFuture.deが2018年7月3日(以下すべて現地日時)に報じたFCC(米連邦通信委員会)通過情報だ。FCCドキュメントからIntelプロセッサの搭載や消費ワット数など、LTEバージョンの存在を示していた。5日にはTwitterにGeekbenchを用いたベンチマーク結果が掲載されている。

それによれば、プロセッサはIntel Pentium Silver N500/Gold 4410Yを搭載し、4GB DDR3 RAMを備える。OSは64ビット版Windows 10 Proだ。現在のPentiumはCore iシリーズの廉価版にあたり、新Surfaceが低価格層デバイスとしてiPadとの価格競争を狙っていることは明らかだ。前述したブルームバーグの記事でも既存のSurface Proアクセサリとは別ラインで、Microsoftが安価なタイプキーボードやペンを製造すると洞察している。

新Surfaceについて日本マイクロソフトはもちろん、Microsoftは何も明言しておらず、公式発表を待つしかない。だが、新Surfaceは対iPadに限らず、文教市場を見据えたデバイスとなる可能性が高い、と筆者は考える。

先のFCCドキュメントによれば、新SurfaceはLTEモデルも用意しているようだ。学校の電波状況に左右されるが、MVMO SIMカードを用意すれば、課題の1つである無線LAN環境の整備問題は容易にクリア可能だ。

さらに「Sモード」の存在は不明確ながらも今後改善される可能性がある。前日、日本マイクロソフトが行った説明会では、Windows 10 バージョン1803(April 2018 Update)でSモードを利用できるのは新規購入時に限定と説明していた。だが、Windows 10 RS5となるWindows 10 Insider Previewでは、以前のビルドからSモードへの切り換え機能が項目として加わるのではないか、という見方が強い。

  • Windows 10 バージョン1803におけるSモードの仕様

  • Windows 10 Insider Previewで確認できる「Sモードに切り替える」の項目。検索情報は用意しているものの、設定項目は未実装だ

このように新Surfaceは文教向けPCの本命となり得る要素がつまっている。ただ、サブデバイスという位置付けで新Surfaceを考えると、価格設定やプロセッサの情報を踏まえる限り、既存のSurface Proを所有しているユーザーにとって魅力的なデバイスとは映らないだろう。

あくまでも文教向けPCは1つの可能性だが、新SurfaceはSurfaceファミリーのラインナップで欠けていた「安価な製品」というポジションを埋める存在ではないだろうか。過去にSurface RTがその役割をになっていたが、結果は読者諸氏がご承知のとおり。新Surfaceが成功するか否かは市場が鍵を握っている。

  • 既存のSurfaceファミリー。現在はここにSurface Hubが加わる

阿久津良和(Cactus)