VMwareは先日、米国で開催された「Dell Technologies World」で、ネットワークの新たなビジョン「Virtual Cloud Network」を発表した。同ビジョンにおいて核となる製品が「VMware NSX」であり、その実現に向けたポートフォリオが刷新された。

これからの20年に必要な新たなネットワークアプローチ

米VMware クラウド&ネットワーキング担当最高技術責任者(CTO) グイド・アッペンツェラー氏

記者説明会で、米VMware クラウド&ネットワーキング担当最高技術責任者(CTO)のグイド・アッペンツェラー氏は、「Virtual Cloud Network」を発表した背景について次のように説明した。

「これまでの20年間、データはデータセンターや企業内に保存されており、ネットワークは特定のインフラ環境の要件に対応できるよう構築されていた。しかし、今は違う。データはデータセンターに加え、クラウド、さまざまなエンドポイントに保存されている。これに伴い、ネットワークの構造も変わってくる。プログラミングが可能なソフトウェアベースのネットワークを構築し、アプリケーションとデータが存在するすべての場所で実行する必要がある。次の20年に向けた新たなネットワークのアプローチが求められており、それがVirtual Cloud Networkとなる」

同社は、Virtual Cloud Networkにより、世界規模でエッジからエッジの運用が可能になると同時に、物理インフラの種類や所在地を問わず、アプリケーションとデータ向けに広範かつ一貫した接続性とセキュリティを実現するとしている。

加えて、Virtual Cloud Networkは、今日のネットワーク テクノロジのメリットを生かしながら、ネットワークの複雑性を大幅に軽減することで、組織のデジタル ビジネスへの移行を効率化し、デジタル トランスフォーメーションを最大限に活用できるよう支援するという。

アッペンツェラー氏は「Virtual Cloud Network」に必要な要素として、「クラウドネットワークファブリック」「組み込み済みのセキュリティ」「ソフトウェアによるネットワークの提供」を挙げた。

Virtual Cloud Network実現に向け刷新された「NSX」ポートフォリオ

「Virtual Cloud Network」の基盤となる製品が、ネットワーク仮想化プラットフォーム製品群「VMware NSX」だ。今回、「Virtual Cloud Network」の実現に向け、NSXのポートフォリオが刷新された。

新たなポートフォリオでは、SD-WAN製品「VMware NSX SD-WAN by VeloCloud」、ネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX Data Center」、クラウド上のアプリケーション向けネットワーキング/セキュリティ製品「VMware NSX Cloud」、ハイブリッドクラウドを実現する製品「VMware NSX Hybrid Connect」において、新機能が提供されている。

  • 「VMware NSX」の最新のポートフォリオ

アッペンツェラー氏は、「NSX SD-WAN by VeloCloud」により、企業がデータセンターと支社をネットワークで接続する際に生じる課題が解決されると説明した。例えば、「専用回線、設備投資、運用にまつわる高コスト」「導入期間の長期化」「アプリケーションの遅延」といった課題を解消するという。「SD-WANが状況を変えた。装置が小さくなり、設定が簡単になった」と同氏。

「NSX SD-WAN by VeloCloud」を「NSX Data Center」や「NSX Cloud」と連携させることで、ネットワークとセキュリティのポリシーをデータセンターからブランチオフィス、クラウドまで拡張して、運用の可視性とエンドツーエンドのコントロールを提供可能になる。

  • 「NSX SD-WAN by VeloCloud」により、データセンター、ブランチオフィス、クラウドに統一されたポリシーを適用可能になる

「NSX Data Center」は、コンテナとベアメタル向けの機能が追加され、あらゆるワークロードに対し一貫したネットワークサービスとポリシーの提供を実現する。コンテナとしては、Pivotal Container Serviceに加え、kubernetes、OpenShiftにも対応し、コンテナ向けの機能として「マイクロサービス向けマイクロセグメンテーション」「マイクロサービス向けの監視と分析」「リファレンスデザイン」などを提供する。

「NSX Cloud」には、マルチクラウド戦略の一環としてMicrosoft Azureを使用している顧客向けにネイティブなコントロール機能が追加された。これにより、「NSX Cloud」からAmazon Web Services、Azureの環境を包括的に監視・管理することが可能になる。

「NSX Hybrid Connect」は、同一のガバナンスやコントロールを維持しながら複数のデータセンターやクラウドを相互接続して、一貫性、パフォーマンス、安全性を備えたソフトウェアファブリックを構築する。また、オンプレミスとパブリッククラウドにおいて、さまざまな形でワークロードの移行を実現する。

  • 「Virtual Cloud Network」の基盤となる「VMware NSX」