AI(人工知能)の進化が進み、自社に導入したいという企業も増えているだろう。本連載では、そんな企業に向けて、AIについて知っておくべき技術的な知識から、AIがビジネスにもたらすメリットまで、わかりやすく伝えていく。

自動運転、医療診断、チャットボット、銀行のコールセンター、ホテルの受付のAIスピーカー、英語学習アプリまで、AIはもはやバズワードというより、企業のみならずわれわれの生活にも入りこむようになった。そしてその振る舞いは日々精度を上げている。

導入の拡大と技術の進化のスピードの早さから、暮らしが楽になる反面、仕事が奪われるのではないかと不安を持つビジネス・パーソンもいる。AIは「Artificial Intelligence」の略であり、人工知能と訳されるが、今までのコンピュータとどこが違うのか、その仕組みはどうなっているのだろうか? これらの疑問に対し、正確に答えられる人は少ないのではないだろうか。

人工知能というからには、人間の脳を模範としていることは間違いない。では現在のAIは人間の脳と同じレベルなのか、それはNOだ。冒頭のAIはすべて特定の問題に特化した「問題特化型AI」。一方、「汎用型AI」はあらゆる問題に対して人間に匹敵する能力を発揮するものだが、現状では実現されていない。

AIの歴史として、今までもエキスパートシステムなどが話題になったことはあるが、今日注目されている第4次AIとどこが違うのだろうか。エキスパートシステムは別名「専門家システム」とも呼ばれ、プログラマーが特定の分野に関する情報を入力し、それを解析するアルゴリズム(推論エンジン)を組み込んでおかなければならず、コンピュータ自らがデータを解析・学習して判断することはできなかった。

現在のAIは、コンピュータ自らがデータを解析・学習して物事を認識・判断できる点に新しさがある。そのベースには、プログラマーがあらかじめすべての動作をプログラミングするのではなく、データをAI自身が解析し、法則性やルールを見つけ出すことができる「機械学習」がある。

さらに、機械学習を「ニューラルネットワーク」(脳のニューロンの信号伝達を数式的なモデルで表した)によって実行する「ディープラーニング」(深層学習)が登場することによって、今までのコンピュータのように、人間がデータを入力しアルゴリズム(やり方)をすべて決めなければならないという制約を超えたのだ。

ニューラルネットワークを活用したディープラーニングによって、AI自らがデータを解析し法則性やルールを見つけ出して、タスクを実行できるようになったことが今日のAIブームを牽引している。ディープラーニングは、プログラマーの指示と履歴を全て記憶・学習し、それを繰り返す度に精度が上がり適切な判断を下せるようになるので、AIのシンギュラリティ(技術的特異点)が話題になっているのだ。シンギュラリティを超えると、AIは人の手を借りることなく自ら進化できるようになり、人類の脅威になると予想する人もいる。

  • 自ら学習・判断するようになったAI

ニューラルネットワークの原理は半世紀前に登場し、その後改良が加えられてきたが、実用化には効率的なデータ処理のアルゴリズムとハードウェア性能がネックとなっていた。ニューラルネットワークを活用したディープラーニングでは、データ処理が膨大になり演算に時間かかるため実用的なAIにならなかったからだ。

ところが、近年の高速なハードウェア(GPU:Graphics Processing Unit、FGPA:Field-Programmable Gate Array、ASIC:Application Specific Integrated Circuit)の登場によって、処理時間が大幅に短縮されて日常生活で使えるAIが登場した。

また、ビッグデータの登場も精度の高いAIに貢献している。データが大量であればあるほど学習効果は上がり、認識精度は向上するからだ。現在のAIは、身近なビッグデータである、インターネットの検索データ、YouTube動画、ウィキペディアやSNS、企業が持っているビッグデータなどを活用できる。つまり、ディープラーニング、高速ハードウェア、ビッグデータという条件がそろったことによって、今日の実用的なAIが実現したと言えよう。

例えば、アップルのSiriやAmazonのAlexaなど、チャットボットや音声作動式のデジタルアシスタントは、より多くの人が物事をこなすために使うようになり、より多くの企業が一次レベルの顧客サービスに採用するようになるだろう。これらのアプリケーションは、音声やタイピングによる会話をAIによって理解し、従来のソフトウェアよりも知的に人と交流することが可能になる。

さらに、AIは膨大な量のデータを休むことなく正確に分析できるため、これまでのやり方では不可能だった画期的なインサイトを企業にもたらす。このインサイトを元にビジネスのアイディアを企画実行することで競争優位性を得られるはずだ。AIにより、マーケターやプロダクトマネージャーは、自分たちの本能を頼りにする「直感主導」のマーケティングアプローチから離れ、データ主導の戦略に移行することが可能になるなど、ビジネスでの活用も拡大する。

著者プロフィール

松崎 亮


Appier Japan株式会社
Director, Enterprise Sales

2004年 コロラド大学ジャーナリズム&マスコミュニケーション学部卒。総合広告代理店の営業を経て、2011年グーグルジャパン入社。SMB を顧客とする第二広告営業本部の初期メンバーとして同本部の成長と組織作りに貢献。
その後、グーグルが買収したダブルクリックの日本の初期メンバーとして参画。DoubleClick Bid Manager (DSP) の拡販、DoubleClick Campaign Manager (第三者配信、DoubleClick Search (SEMツール、Google Analytics を含めたグーグルのアドテクソリューション営業に従事。
2017年に Appier Japan に入社。同社の人工知能をベースとしたオーディエンス予測分析プラットフォーム「Aixon(アイソン)」の日本営業統括責任者。