4月は新生活が始まる時期です。新たに賃貸契約を結ぶ人もたくさんいるでしょうか、契約を結ぶ際に気をつけたほうが良いことを司法書士の市倉伯緒氏に伺いました。

賃貸契約書を結ぶ際に特に気をつけるべきことは何でしょうか?

賃貸借契約において最もトラブルが多いのが退去時の原状回復についてです。

大きく二点ありますが、まず一つ目は、契約を結ぶ際には契約内容をしっかり確認しておくことが重要です。

ほぼすべての契約書に賃借人の原状回復義務が定められており、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(以下『ガイドライン』といいます)」によれば、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を回復すること」をいいます。

簡単にいうと、普通に使っていて発生する損耗や毀損(床の家具の設置跡、壁の画びょう、ピンの跡、クロスの日照による変色)は、入居者は原状回復義務を負わないことになっています。

このガイドラインは全国各地の裁判例をベースにして作成されており、トラブルの未然防止の観点から妥当と考えられる一般的な基準となりますので、契約書の内容と見比べてみるといいでしょう。

二つ目は、入居時の物件の状況をよく確認しておくことが大事です。入居時の状態を記録しておくことで、もともとあった傷なのか、入居後に生じた傷なのか等が明確になり、責任の所在がはっきりするからです。

入居時に借主・貸主の立ち会いができればチェック表や写真を撮るなどして、借主・貸主相互に確認しておくことが良いでしょう。立ち会いができない場合は、入居後すぐに行いましょう。

敷金・礼金がない賃貸は、出るときにお金がかかるというのは本当でしょうか?

礼金とは、部屋を貸してくれる大家さんへのお礼の気持ちという慣習から渡されているもので返還はされません。

一方、敷金とは、保証金的な意味合いで、家賃や共益費の滞納などに備えて担保として預けるもので、賃貸借契約から発生する入居者の債務と相殺することが認められています。

退去時に発生する原状回復義務に基づく修理代金がある場合には、これらを敷金から差し引いて返金することになります。したがって、敷金・礼金がない賃貸(いわゆるゼロゼロ物件)は、退去時に上記の修理代金を入居者が支払う必要があります。

友人とルームシェアを考えている場合、契約時はどのようにしたらいいのでしょうか? 内緒にしていたもいいのでしょうか?

部屋を借りるということは、貸主である大家さんとの信頼関係が大切になります。大家さんとの信頼関係を築くという意味でも、契約時にルームシェアすることを告げておいた方がいいでしょう。

基本的には、入居者全員が契約当事者になる連名の契約になります。この場合、連帯保証人について入居者それぞれがつけることが多いです。ルームシェアを内緒にしておいて後で発覚した場合、法律上は転貸(又貸し)となりますので、契約違反として解除事由になりますので気をつけましょう。

最後にメッセージを

契約書の内容を確認することは、法律用語になれていない場合、読み込むのは億劫で大変かもしれません。しかし、余りにも賃借人に不利な条項や特約を除き、最終的には契約書の内容に拘束されることになりますので、疑問点等はあらかじめ契約時に解消しておくことが後々のトラブル防止になるでしょう。

市倉伯緒(司法書士)

司法書士赤坂トラスト総合事務所 代表司法書士。簡裁代理権認定司法書士。(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター まちづくり専門家。
1973年生まれ。東京都出身。平成15年司法書士試験合格
広告代理店、大手通信会社を経て、平成16年から都内大手司法書士法人に10年間在籍。平成26年11月司法書士赤坂トラスト総合事務所 開業。各種不動産・会社・法人登記・裁判手続に携わるほか、顧客のニーズに応じた様々な法務サービスの提案及びコンサルティングを行っている。 司法書士赤坂トラスト総合事務所