外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年3月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 3月の推移】

3月のユーロ/円相場は128.939~132.435円のレンジで推移した。月間の終値ベースでは約0.7%上昇したが、方向感を欠く展開であった。独社会民主党(SPD)党員投票にて、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立が承認された事などからユーロ買いが先行したが、ドラギ欧州中銀(ECB)総裁が金融政策正常化に慎重な姿勢を示した事が重しとなり伸び悩んだ。

米国が相次いで関税措置を打ち出した事や、トランプ米政権内で重要人物の解任・辞任が続いた事などから、市場センチメントが悪化する中、円買いが強まると23日には129円台を割り込み、2017年8月以来約7カ月ぶりの安値を付けた。ただ、その後は四半期末に向けた投機筋のポジション調整などもあって131円台に反発するなど、ひと月を通して方向感が定まらなかった。

【ユーロ/円 4月の見通し】

磐石と見られた欧州景気も、ここにきてやや陰りが見られる。ユーロ圏の製造業PMIは今年に入り3カ月連続で低下しており、インフレも減速気味だ。4日に発表される3月消費者物価指数は前月からの上昇が見込まれているが、前年比の上昇率は依然として1%台前半にとどまる見通しとなっている。

欧州中銀(ECB)のドラギ総裁も、3月中旬の講演で「基調的なインフレは依然弱い」「ユーロ高がインフレ率にとって今後の重しとなる恐れがある」などと述べている。昨年のユーロ高の原動力となった「ECBの金融政策正常化観測」は盛り上がりにくい地合いだろう。こうした中では、高水準のユーロ買いポジションも相場の重しとなりやすい。シカゴマーカンタイル取引所におけるユーロ先物の買いポジションはネット残高が14.1万枚(3/27時点)と高水準にあり、上値では戻り売りが出やすいと考えられる。

3月は世界的に軟調だった株式市場が、4月入りで持ち直せばユーロ/円も大きく崩れる事はないと見るが、200日移動平均線などが位置する132円台前半から100日移動平均線の133円前後にかけては上値が重くなりそうだ。

【4月のユーロ圏注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya