本格的に動き出したAI・ディープラーニングの世界。具体的なソリューションが次々と登場した2017年を「AI元年」と呼ぶ声も多い。そして、AI・ディープラーニングの利用が広がるにつれ、注目度が上がっている存在がGPU(Graphics Processing Unit)である。

レンタルサーバーやクラウドサービスを提供するカゴヤ・ジャパンは、2018年2月8日 品川インターシティにて「GPUによるAI・ディープラーニングの現在と未来」をテーマに「IT・WEBソリューションセミナー GPUサーバー特別編」を開催。本記事では、当日の講演内容から「AI・ディープラーニングの現在と未来」について探ってみる。

  • 事例でみるAI・ディープラーニングの現在と未来

    「GPUによるAI・ディープラーニングの現在と未来」をテーマに開催された「IT・WEBソリューションセミナー GPUサーバー特別編」

AI・ディープラーニングのビジネス活用事例

最初のセッションに登壇したのは、XEENUTS 代表取締役 西田 泰彦氏。同社では、2016年よりクラスキャットとAIに関わる活動を共同事業としてスタート。現在までに、すでに9件のAI関連プロジェクトが進行中とのことだ。

西田氏によると、今、AIが脚光を浴びている理由は「人の認知活動の模倣ができる基盤ができたこと」そしてそれらが「具体的なプロダクトラインに組み込まれたこと」の2点を挙げた。

例えば自動運転においては、画像解析によって他の自動車や道路標識、そして信号などを認知することになる。そして、この技術を用いた「完全自動運転」についても、米国の自動車メーカーでは2016年からプロダクトに組み込まれて販売されている。つまり「今は、AI・ディープラーニングの技術は、すでに基礎技術ではなく応用技術の段階に入っている」状況ということだ。

  • XEENUTS 代表取締役 西田 泰彦氏

    自らが関わった数々の事例をもとにAI・ディープラーニングの現在を解説する西田氏

「最近は『AIを自社に導入して活用したいけど、具体的に何ができるのか』というご質問をよくいただきます。ただ、AIはあくまでもツールであり何ができるのかに対する明確な答えはありません。“何ができる”のかではなく、“何に困っている”のか。その困りごとに対して、AIの活用を考えていくべきでしょう」(西田氏)

例えば目視検査の場合、わずかな傷やゆがみを見抜く熟練社員の存在が品質管理の鍵を握ることとなる。だが、どれだけ経験を積んだ人であっても疲れや体調によっては検査の結果にバラツキは生じる。それどころか、もしその熟練社員が定年退職してしまえば品質を維持することすら難しくなる。そこで、まずAIによる画像認識で正常と異常を分類して、異常に分類された製品だけをチェックするのであれば、社員の負担も減り目視検査の精度も向上する。AIがサポートするのなら、熟練社員の後を引き継ぐ後継者の育成も容易になるだろう。

「AI・ディープラーニングは、大きな可能性を秘めた技術です。ただし、この活用には大量に蓄積されたデータが必要です。そして、データの蓄積には時間がかかります。ですから、AI・ディープラーニングの技術を利用したいと考えているのであれば、“いつか”ではなく“今”やるべきです。早く始めれば、それだけ早く、そして多くのデータが集まります。それは、AI・ディープラーニングを活用する上で、大きな優位性を持つことになります」と語り、西田氏は講演を締めくくった。

NVIDIA社が解説するAI・ディープラーニングの今と未来

続いて登壇したのは、GPU(Graphics Processing Unit)業界における最大手NVIDIA社 エンタープライズマーケティング部 マーケティングマネージャー 佐々木 邦暢氏だ。

GPUは、主にグラフィック処理などで必要とされる行列演算を得意とするユニット。AI・ディープラーニングにおいては、膨大な量の行列演算が必要とされるため、GPUはCPUと比較すると10倍ものパフォーマンスを発揮する。これが現在、GPUに注目が集まる理由である。

佐々木氏は、同社のGPUを使用したAI・ディープラーニングの活用事例として、脅威予防をするセキュリティソリューション、音声認識で通話記録を自動分類するコールセンターのシステム、動画内に表示された広告の効果測定をする画像認識システムなどを紹介。AI・ディープラーニングの技術は、すでに多くの分野において活用が進んでいるとの見解を示した。

  • NVIDIA社 エンタープライズマーケティング部 マーケティングマネージャー 佐々木 邦暢氏

    NVIDIA社製GPUによるソリューションの事例として、AIを用いたセキュリティソリューションを紹介する佐々木氏

佐々木氏は「ディープラーニングを加速させる3つの要因」として、学習手法の一つであるディープ(畳み込み)ニューラルネットワークの実装、学習に必要となるビッグデータ、そしてそれらを高速に処理するGPUを挙げた。

「現在では、ディープニューラルネットワークにも数多くのフレームワークが登場しています。SNSや動画サイトには大量のデータが日々アップロードされています。そして私たちが提供するGPUも、ここ1~2年で急速に進化しており、この分野はまだまだ加速し続けます。2017年には、AI・ディープラーニングに向けた新しいアーキテクチャーのGPUとしてVoltaを発表しました。今後も、私たちはAI・ディープラーニング分野を支える“縁の下の力持ち”として、挑戦を続けていきます」(佐々木氏)

  • 佐々木 邦暢氏

なお、カゴヤ・ジャパンは、AI・ディープラーニングソリューションの活用に向けた、GPUサーバーの提供サービスを行っている。2018年2月13日からは、GPUサーバーを時間単位で利用できる「時間課金サービス(340円/時間)」を開始。このサービスは、AIの運用テストや週一回のパフォーマンスチェックなど、短期間の運用に最適なものとなっている。また、この価格設定であれば、企業ではなく個人レベルの研究でも利用が可能となるだろう。

  • カゴヤ・ジャパンの森 明義氏

    GPUサーバーのサービスラインナップを解説するカゴヤ・ジャパンの森 明義氏

講演にて佐々木氏が紹介したNVIDIA Voltaもラインアップに追加予定とのこと。なお、詳しいサービスのラインアップと概要については、以下をご覧いただきたい。


[PR]提供:カゴヤ・ジャパン